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神戸SDGs大賞の受賞にあたっての想い

 弓削牧場は初代が1940年代に脱サラでの新規就農、起業家精神で法人として酪農を始めました。当時新しい食べ物であった牛乳は時代と共に生産が増えてきましたが、80年代前半に起こった牛乳の生産調整の中で生き残りをかけて、チーズを製造と牛乳の瓶詰め事業を個人の酪農家として西日本で初めてスタート。当時の新しい食品であったチーズの食べ方の提案をする拠点としてチーズハウス「ヤルゴイ」の営業を開始し、飲食店事業を組み合わせることで経営の安定化を計ってきました。これはのちに”六次産業化”という新しい農業の形として認知されることとなりました。


1997年の阪神淡路大震災を経て、2000年頃より牧場近郊の開発が進むにつれ、都市近郊酪農が抱える問題が浮き彫りになる中、牛の糞尿を堆肥化して牧場内で利用するだけでなく、バイオガスとして活用にすることによって、酪農家として新たな価値が提供できるのではないかと模索してきました。当時は小規模の酪農家が使いやすく、安価な小型のバイオガス設備が世の中にはなく、ヨーロッパや日本全国を視察し、資料を取り寄せながら手探りの稚拙な実験の日々が続きました。


幸いにして、北海道の帯広畜産大学の梅津教授・その教え子である神戸大学の井原教授との出会いから共同研究プロジェクトへと進化し、ようやく完成型が見えてきまた。この小型バイオガスユニットは、農場の大きさにあった設備に作り替えることもでき、安価で機動性のある設備です。そして、さらなるパートナーを得てさらに進化しようとしています。

また、設備だけではなく、バイオガスを取り出した後に副産物としてできる消化液に肥料としての可能性があることに着目し、有機JAS資材認証を全国に先駆けて取得しました。今ではこの消化液を使って、農薬や化学肥料を一切使わずに農作物を生産したいという賛同者に恵まれ、酒米や食用米、野菜や果樹、花卉の栽培においてもよい成果が出つつあります。また、肥料効果だけではなく、畑の微生物や有機物等を活性化させる可能性があることや、漁業においても効果があるのではと各地で研究も進んできています。


私たちが生き残りをかけて自主の精神で取り組んできたことが、世界全体が気候変動対策に舵を取るなか、”SDGs”の視点でとらえられるようになり、また、消化液の活用においては、日本が目指す2050年の有機栽培農産物25%の生産を達成するために、酪農家が地域の農家や生産者、そして消費者と繋がることにより肥料の供給拠点としての新たな価値を生み出すことができると思っています。


これからの未来はそれぞれが知恵を持ちより、地域、そして日本、世界で共に同じ未来を見据える仲間と共に問題を解決していく時代になっていくと思います。この受賞をきっかけに同じ志を持つ新しい仲間たちと出会うことを楽しみにしています。

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